このプロジェクトにおける社会関係資本(SC)とは
社会関係資本とは、信頼・ネットワーク・互酬性の規範を備えた人とのつながりを指します。とくに子どもにおいては、親以外の信頼できる他者とのネットワークを築くことを目指します。
CCCの科学的ガイドラインとエビデンス基盤
私たちは、すべての子どもが家庭や地域の条件に左右されることなく、親以外の信頼できる大人(第三者)と継続的につながりながら成長できる社会基盤の構築を目指します。その実現には、関わるすべての人の安全と安心を保証するルールが不可欠です。
そのため、国内外の子どもに関する既存ガイドラインの精査と、実験室研究や大規模調査で得られた科学的エビデンスを統合して、CCC独自のガイドラインとして体系化します。これは単なる指針ではなく、実証結果を随時組み込むエビデンス循環型ガイドラインとして、継続的に更新・改善していきます。
また、どのような親・子・第三者が、どのように関わることが最適かを明らかにするため、親子関係や地域特性、価値観の多様性を踏まえた研究を進めます。将来的には、AIロボットも「第三者」の一形態として関わり得る可能性を視野に入れ、最適な関わり方のデザインと効果検証を行い、その成果をガイドラインに反映していきます。
他者とのつながりの評価・測定
私たちは、信頼できる他者とのネットワーク(社会関係資本)を主観的なアンケートだけに頼らず、客観的に評価できる仕組みづくりを進めます。具体的には、心理的な指標に加えて、プライバシーを守りながら日常の人との交流や心身の状態を把握する手法などを組み合わせた新しい評価系を開発します。
こうした取り組みにより、子どもや家族、地域コミュニティの中で社会関係資本がどのように育まれているのかを、できるだけ正確にプライバシーを守りながら把握します。その上で、得られた知見をもとに最適な交流がさらに広がるよう、実践とガイドラインの双方を改善していきます。
介入デザインとコミュニティ実証
私たちは、全国に、親・子・第三者が安心して継続的に関われる場を、親子と多様な第三者がゆるやかに関わるモデルである東北大学WELL Community®を核に、都市・地方・離島・被災地など多様な地域で展開し広げることを目指します。WELL Community®の取り組みは、ウェルビーイングのプロセスの国際基準であるISO92225に準拠するように設計しています。
介入プログラムとしては、アート、ロボット、オンラインプログラム、サイエンスなど複数の手法を開発しており、地域の特性などに応じて柔軟に組み合わせ、最適な形で実施できるようにすることを目指しています。WELL Community®の実証研究では、12か月の追跡により、親と第三者の主観的ウェルビーイングの有意な向上や、子どもにとっての「安心して過ごせる居場所感」の醸成が確認されました。これらの成果は、社会的孤立や子育て不安の軽減に結びつく実践知(エビデンス)として蓄積され、今後の全国展開に活かしていきます。
CCCの社会実装に向けた取り組み
私たちは、出生環境に左右されることなく、すべての子どもが親以外の信頼できる第三者と安全につながり、継続的に質の高い社会参加を経験できる社会基盤の構築を目指します。特定の人や団体に依存せず、多様で信頼できる大人が持続的に関われる仕組みを、企業・自治体・東北大学等による産学官民連携で協力し、社会全体で子どもを育てるモデルをデザインします。
このモデルを支えるために、第三者の適格性を評価・研修する体制を整備し、関わりを利用したインセンティブ設計も導入します。これにより、誰もが安心して参加でき、持続可能な関わりが保障されることを目指します。
さらに、研究成果を社会に根づかせるために、「設計―実装―評価―再設計」の循環を常設化するフレームワークを構築することで、科学的エビデンスを現場に反映し、現場の実践知を再びエビデンスとして蓄積することで、社会全体で共有可能な標準運用モデルを形成することを目指します。